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太極拳

太極拳とは

武術・戦闘術として継承されてきた太極拳は、基本に始まって、套路、推手、散手と進むのが一般的な流れで、太極拳の技法を習得するものです。

套路は緩やかで流れるようにゆったりとした動きで行い、正しい姿勢や体の運用法、力の伝達法や意念、精神のコントロール法を修得し、様々な戦闘技術を身に着けます。

実際の戦闘における動作はゆっくりしたものではなく、熟練者においてはむしろ俊敏で力強いものとなります。

太極拳は相手の力の大きさと意志、意念、方向を察知し、柔軟な動きで相手の力を外し、自分の力を最も合理的に使う高度な技法の武術です。

太極拳の鍛錬は、心身をリラックスさせ、意識で身体の内外の動きをコントロールし、自然な呼吸と組み合わせ、緩慢、柔和に行います。太極拳の各動作は常に弧形を描き、動作は途切れるとなく一貫され、意識が動作を率い、深く落ち着いた呼吸と調和させ、太極拳運動の後、全身の血管は流通され、呼吸は荒くならず、心身共に心地良くなり、精神も生き生きしてきます。

元来、太極拳は様々な実践武術の鍛錬の先に「剛柔相隋」「虚実分明」「用意不用力」などの悟りを得た高貴な武術であり、武術としての一つの極みの境地でもあると考えられていた哲学を内包し、思想・哲学と自然で柔和な動きから、年配者や虚弱体質の人でも、体力に合わせて参加することができ、近年では、緩慢な動きと呼吸器官、心臓血管系統、消化器系統、自律神経系統、中枢神経系統、大脳皮質系統へ良好な作用と影響を及ぼし、老化予防に繋がる下半身の筋力の強化より、慢性病患者への体育医療、治癒効果が著しいとされ、老若男女の幅広い年齢層が参加できる健康法(生涯スポーツ)として医療保健、補完代替医療として世界で広まってきました。 

太極拳の起源

元代、張三豊が少林寺で武術を修めた後に武当山に入って修行し、道教の陰陽五行思想や吐納法と呼ばれる呼吸法を取り入れて編み出したとされています。

太極拳はかつて「長拳」「浩綿拳」「十三勢」「軟手」「軟拳」「化拳」「棚勁拳」など、様々な呼称がありましたが、王宗岳が「太極者無極而生、陰陽之母也」で始まる『太極拳論』を著してから「太極拳」という呼称が定着したと考えられています。

その他の起源については、明代に河南省温県常陽村(現陳家溝)に強制移住させられた陳一族に家伝として伝えられていた武術に、陳氏9世 陳王廷が様々な武術の要素を組み合わせ、明代末期から清代初期にかけて創始されたとする、武術史研究家・唐豪の研究があります。その後清代末期に入り、陳氏14世・陳長興の弟子だった楊露禅が、北京に赴きこれを普及。武術理論として王宗岳の『太極拳論』が重視されたため、そこから取って『太極拳』という名称が用いられるようになったと言われています。現在では、陳家太極拳、楊式太極拳、武式太極拳を始めとして様々な門派が存在します。

太極拳は武術を整理する中で陰陽思想や中国古代の「導引法」「吐納法」をも結合させることによってでき上がった武術であり、今では三百数十年の歴史があると言われています。

【門派】

<陳式太極拳>

河南省陳家溝の陳一族を中心に伝承され全ての太極拳の源流と言われている。柔軟で緩やかな動きと、纏絲勁(螺旋の道理による力の作用方法)によって全身の勁を統一的に運用して繰り出される豪快な震脚や発勁が特徴である。

<楊式太極拳>

陳氏14世・陳長興の弟子である楊露禅が創始し、19世紀の北京において広く門弟に教授された。動作は伸び伸びとして柔らかく、一見して激しい動作を行わない点が、陳式太極拳との大きな違いとなっている。

<呉式太極拳>

楊露禅より学んだが楊露禅自身の指示で子である楊班侯の門下になった全佑と、その子・呉鑑泉によって創始された。前傾姿勢をとることが他流派と異なり、独特な風格としては軽さと機敏さ、そして円滑さがすべての式で貫き通されることで知られている。

 

<孫式太極拳>

孫禄堂によって創始された。形意拳の歩法、八卦掌の身法、武式太極拳の手法が統合されている。開合によって動作を連関し、快速な活歩によって転換することから、開合活歩太極拳とも称される。

<武式太極拳>

楊露禅の友人である武禹襄が露禅に陳家太極拳を学んだ後、陳清萍に弟子入りして本格的に陳家太極拳を修め、それに独自の理論を加えて創始した。親族にしか伝承されないなど近年まで保守的な姿勢をとっていたため、伝承者は極めて少ない。太極拳の名称の由来となったと言われる

 

上記5つの太極拳流派は、「五大太極拳」と呼ばれる。

 

 

 

制定太極拳

<簡化二十四式太極拳>

1956年中華人民共和国体育運動委員会は、大衆の中に比較的広く伝わる固有の太極拳套路の整理を行うという調査、研究にとりかかった。固有の套路の中の重複した動作を取り除き、過去の「最初難しく、後は容易になる」という順序を改変し、主要な構成と技術内容をまとめた。最初は容易で、後に難しくなること、内容が簡単明瞭であることの要求に基づき、初心者が学び易く、練習し易く、また掌握し易いという目的で「簡化太極拳」(二十四式)が編成された。この簡化二十四式太極拳は八組に分かれ、「起勢」と 「収勢」を 含め二十四の型の動作がある。 

 

<総合四十二式太極拳>

1990年、第11回北京アジア競技大会に正式種目として起用された武術(国際名称:WUSHU)の競技種目、長拳、南拳、太極拳のうち、太極拳の競技用の規定套路(型)として1980年代後半に発表された。総合太極拳は動作の数から「四十二式太極拳」とも言われ、四十八式と同様に楊式太極拳をベースにして、陳氏、呉式、孫式の動作を組み合わせて創られた套路。内容は優雅で見栄えのある動きが多いため世界的にも人気が高い。

 

<三十二式太極剣/四十二式太極剣>

太極拳の武器の入門用として編纂された。楊式太極剣をもとに編纂された『三十二式太極剣』と、競技用套路として陳家、楊式、呉式の動作を組み合わせた『四十二式太極剣』(総合太極剣)がある。総合太極拳と並んで、競技会で盛んに行われている。

武術・戦闘術として継承されてきた太極拳は、基本に始まって、套路、推手、散手と進むのが一般的な流れで、太極拳の技法を習得します。套路は緩やかで流れるようにゆったりとした動きで行い、正しい姿勢や体の運用法、力の伝達法や意念、精神のコントロール法を修得し、様々な戦闘技術を身に着けます。実際の戦闘における動作はゆっくりしたものではなく、熟練者においてはむしろ俊敏で力強いものとなります。尚、套路練習の中でも速い動きのものもあり、また、推手の練習では、姿勢や体の運用法の正しさや、相手と適切な接触を保つ技術、相手を感じる能力など武術・戦闘術としての理解度を深めることができます。太極拳の熟練には推手と套路は車の両輪と言われ、実は推手をやらなければ太極拳は本当の意味で理解できないと言われています。

太極拳の修練要求

速度

太極拳の動作は急がず、穏やかに、淡々と、精神的にも肉体的にもゆっくりと修練し、まず動作を修得して要領を把握する。太極拳を行う速さは最初から最後まで均一した速度を保つようにする。

 

 

一定

腰の高さは、はじめは高めで行い「起勢」の時、その高低の程度が確定される。その後に続く動作は、ほぼ同じ腰の高さを一定に保つ。体力や脚力があまりない人、健康を求めるには、腰を高くしてリラックスして練習し、体力・筋力ともも増強されるに従い、腰を低くしてもよいが腰を低くすることが直接、体力・筋力の増強につながるとはいえない。太極拳の修練で最も要求される一定は「精氣神」であり、これは肉体と、精神と気を共に一定に保ち、高めることにある。

 

 

運動量

太極拳運動は、内面と外面の要求がある。上下肢は一定の屈曲または緩みのもとで、緩慢な動作が要求される。それに加え、全身の内 (呼吸や意識)と外 (動作や形)、 動作の高低を集中・統一させなければならないのでー定の運動量が見込まれる。そして内外をつなぐものが意念であり、力の源、流通、用法、虚実を組み合わせて行うことに最も頭を働かせることが運動量の一つになる。外面的には、特に下肢の運動量は比較的多く、両足の虚実が明確にすることが要求され、体重は常に片方の足に負担がかかる。重心移動の過程で動作はゆっくりと行うことが要求されることから、比較的長い時間が費やされ下肢の負担は大いに増すことになる。体力に自信がない人は、自己の身体の状況に基づき、適切な運動量を調節しなければならない。慢性病患者は、 毎回の運動量は多過ぎず、徐々に運動量を増やしていき、その運動量は、病に適した措置を取り、一時に多くやって早くを求めず、成功を焦らないようにする。 

 

継続

太極拳は、他の運動と同じく、やめることなく継続することが必要である。自己の仕事、習慣、学習時間の状況に基づき、余暇に練習するのが好ましい。形を覚えただけで満足したり、すでに上達と認識したり、また病状が良くなったと感じたりして、練習をやめてしまってはいけない。太極拳を継続することにより、体力増強や治療・予防 効果が得られる。

 

心静体松
「心静」心が落ち着いている
「体松」体がリラックスしている「心静」一切の雑念をできる限り排除する事である。いかなる時も心の中は終始安定状態を保ち、神経が各々の細部の動きの中まで注ぎ込まれ専念できるようにすること。 

「体松」全身を自然にリラックスした状態にし、いかなる拘束や圧迫も受けないこと。

 

連貫円活

「連貫」とは動作のつなぎが中断したり途切れ途切れにならないで前後が繋がっていくこと。 

「円活」とは動作をするのに自然に順序良く繋げていくこと。

 

柔緩均一

太極拳の要求である「運動如抽絲」は、繭から糸を取る如く綿々として断えることなく、力は強ばらず、滞らず、速度は急に速くなったり急に ゆっくりなることなく、動作を柔らかく緩やかでムラのないものにすると言うこと。動作はゆっくりし過ぎると気勢が散漫になるので、気勢が一 貫し、呼吸は自然、動作が中断しないこと。

 

上下相随

「一動無有不動」動作は全身各部で動かないところはない。

「由脚而腿而腰総須完整一気」力は足から脚、腰に伝わり、腰が主となり全身が定まる。

「上下相随,周身協調」が要求するものは、上下肢と胴体部の調和、動作と次の動作間の密接な関係が外部協調となり、意識・呼吸・動作の調和が内部協調となる。

 

虚実分明

運動、肉体、精神、自然界は矛盾した要素を常に持ち、虚実変化する。太極拳では、動作の完成、重心のあるところ、主要内容、緊張を「実」、過程動作、重心を補助しているもの、補助呼応、弛緩を「虚」とし、これを明確に認識・理解・区別する。

「虚中有実、実中有虚」虚実は剛柔・内外・陰陽と対立するものを理解し、統一させる。矛盾するものは絶対対化することはできず、相互依存し、転化する。

太極拳の効果

補完代替医療・生涯スポーツである太極拳

現代行われている太極拳の修練の目的は、数千年の歴史を持つ太極拳を現代に理解しやすく学び、近代のエクササイズに中国哲学である、陰陽、虚実、内外、表裏、攻防に加え、中医学観点の知識(陰陽五行説)と思想を融合させた独自のノウハウを加味し、エクササイズや知識を日常の生活習慣の中に浸透させていくことを実践することです。

 

太極拳は、ゆっくりした意識的全身運動で全身の筋繊維を効率よく動かし、特に足腰の筋肉が強化され「転倒防止効果」があります。

動作は「意を以って力を用いず」と言われ、意識が導く運動により大脳皮質の血行が増加し大脳が活性化され、脳波にアルファー波が発生し、エンドルフィンが分泌され、「気持ち良さ」を作り出し、精神面、情緒面に良好な効果をもたらします。太極拳の運動によって、心肺機能が増進し、血液性状が良好に保たれる結果、自己防衛免疫能力も増え、病気にかかりにくく、またかかっても回復が早い体質に改善され、自然治癒力、自己回復力、免疫力が活性化します。

 

“生涯スポーツ”といわれている太極拳は、ゆっくりと均一の速度で、力を使わずに動くので、現代人の生活習慣にないもので、手足のバランスを保ってゆっくり動かすことは、普段使っていない筋肉と神経系を使い、動作は緩めて行うので、自分自身の心身の状態が良く分かり、こわばっている部分や違和感のある部分を太極拳の動きによって調整することができます。

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